SUSTAINABILITY OF GYXIS
ジクシスの将来へ向けた取組み
人事総務部 島 瞳子、グリーン戦略室長 田中 保
カーボンニュートラル推進のために新設されたグリーン戦略室
——人事総務部の篠島です。今日はグリーン戦略室の役割についてお伺いしたいと思っています。よろしくお願いします。
田中 グリーン戦略室長の田中です。よろしくお願いします。グリーン戦略室は、カーボンニュートラル推進のために2023年に新しく設置された部署です。その役割は主に三つありまして、一つはカーボンニュートラルに関する施策や戦略を立案する役割、二つ目は、その施策を社内の関連部署と連携して推進したりサポートしたりする役割、三つ目は、カーボンニュートラルに一緒に取り組んでいただく企業や日本LPガス協会、株主各社、得意先の皆様と連携して動けるようにする役割を果たすこと、この三つが大きな役割です。カーボンニュートラルの施策は、グリーン戦略室だけで実行できるわけではありません。社員一人ひとりが当事者意識をもち、全社一丸で取り組むことが重要ですが、我々の部室はその旗振り役を担っていると考えています。
篠島さんは、GSLのメンバーとして活動をなさっていますね。
篠島 はい。社内の有志の集まりであるGSL、ジクシスSDGsリーダーズは2021年から活動をしていて、今年が3期目になります。3期のテーマは「全社的にSDGs活動に取り組む」で、先ほど田中さんのお話にもありましたが、わたしたちもSDGsの旗振り役を担う活動をしています。
今年は、管理職以外の社員100数十名に参加いただき、一人ひとりからSDGs活動について意見を聞いて、それをまとめたものを役員に報告したところです。今年はGSLメンバーも増えて9名となり、少しにぎやかになりました。
田中 GSLの活発な活動についてはわたしも認識しています。具体的な活動についてもう少し聞かせてください。
篠島 例えば、他の企業がどのようなSDGs活動を行っているのかを学ぶために、株主である住友商事さんとコスモエネルギーホールディングスさんの両社を訪問させていただき、SDGs活動についての取り組みをヒアリングしました。
田中 参考になる取り組みはありましたか。
篠島 住友商事さんでは100周年記念でSDGsの活動に大々的に取り組まれていたので、ジクシスも10周年を迎えるにあたり、ふさわしい取り組みができないかを検討し始めたところです。グリーン戦略室は発足して1年目のところですが、ここまでのご苦労や今後の展望などはいかがでしょうか。
田中 そうですね。2023年4月に組織ができたのですが、それ以前から部門横断のタスクフォースチームを組成して、カーボンニュートラルLPGの商品化に向けての検討や準備を1年ほど進めていました。その流れを受けて、次のステップとしてグリーン戦略室が新たに設置されたという背景があります。その意味では、以前からの取り組みを継続そして拡大して組織化したといえます。組織化と併せて、カーボンニュートラルに係わる取り組み方針を策定しましたので、それに基づいて皆さんと一緒に一つひとつ施策を実現しようと動いています。
自然災害の多い日本にマッチしたクリーンエネルギー、LPガス
篠島 ジクシスはLPガスの製造、貯蔵、輸送、売買および輸出入などに取り組んでいますが、あらためてLPガスについて特徴や役割をお伺いしたいと思っています。
田中 我々が取り扱っているLPガスは、日本全国で2200万世帯、全体の約4割の世帯で使われている重要なエネルギーインフラです。給湯や調理など、日常生活に欠かせないエネルギーの安定供給を、わたしたちジクシスが担っています。LPガスがある生活は当たり前のように思えるかもしれませんが、昨今は地政学的なリスクの増加や異常気象などにより、需給バランスやサプライチェーンが不安定化しています。そういった中でも我々は必要とされる数量を輸入して、それを日本全国に供給する社会的な使命があると考えています。一方で、エネルギー企業として、低炭素・脱炭素社会の実現に向けて真摯に取り組むことも我々の責務です。LPガスの特徴としては、化石燃料の中ではLNGと並んで環境にやさしい低炭素エネルギーです。そして劣化せず、取り扱いが容易で可搬性もあります。
篠島 クリーンな特性もさることながら、個人的にはLPガスのレジリエンス性に注目しています。日本は自然災害が多い国ですので。
田中 そうですね。災害からの回復力や対応力といったレジリエンスの側面でもLPガスは優れた特性を持っています。分散型エネルギーとしてのポテンシャルは、もっと評価されても良いと思います。また脱炭素社会、そして、その前段階としての低炭素の時代に、大きな役割を果たすことができると考えています。
ジクシスはLPガスのグローバルトレードも行っています。海外に目を向けると、アジアやアフリカには、ガスや電気がなく薪や木炭で生活している人びとがまだいます。LPガスへの転換により、そのような人びとに安心で便利な生活を提供することができます。また、薪や木炭を燃やした煙を吸い込んでしまうといった健康被害を防止したり、燃料を得るための森林の違法伐採を減らしたり、主に調理の担い手となっている女性を長時間の薪炊きから解放したり、結果として女性の社会進出を支えたりするなど、SDGsへの貢献にも繋がります。
篠島 LPガスが低炭素でクリーンなエネルギーであることは知っていましたが、それがSDGsの7番、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の項目に結びついていく。お話を伺っていると、人びとの生活を変えたり、森林伐採を抑制したり、いろいろなことに結びつくのだと勉強になりました。
田中 日本では人口が減ってきており、省エネも進んでいるため、LPガスの需要は少しずつ減少する見通しですが、世界的に見るとまだまだ需要が増加傾向にあります。我々の持つノウハウやビジネスモデルを使って、成長できる余地が大いにあり、我々が追求すべき分野の一つだと考えています。
カーボンニュートラルに向けての五つのイニシアティブ
篠島 2050年のカーボンニュートラルに向かっての取り組みを聞かせていただけますか。
田中 2023年4月に、取り組み方針を策定してホームページで公表しました。ご存じの通り、日本は「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」目標を掲げていますが、エネルギー産業は安定供給を担いながら、カーボンニュートラルを実現するチャレンジングな課題に取り組むことが求められています。
ジクシスはそのような社会環境に対応するため、2030年に当社の事業活動に伴う直接排出量であるスコープ1&2(*1)を2020年度比で90%削減、2050年にカーボンネットゼロを目標として打ち出しました。LPガス元売り業界では最初に削減目標を公表した企業だと思います。そしてその目標を達成するための取り組みの方針として、中心となる施策を5つ掲げています。
*1:スコープ1は、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う排出
篠島 それぞれについて詳しく教えてください。
田中 はい、まず直接削減については、当社の事業活動に伴う直接排出量について、国際的な第三者認定機関が認めたボランタリー・カーボンクレジットを使って毎年オフセットしています。これに加えて、2030年に向けて自社で使用している電力の非化石化に取り組みます。
次に、LPGの低炭素化については、LPガスにCO2排出削減効果をクレジット化したカーボンクレジットを組み合わせたカーボンニュートラルLPGといった商品を2022年に販売開始しています。現在当社の特約店様や需要家がCO2削減の自主的な取り組みとしてカーボンニュートラルLPGを活用されています。また2023年には、取引先のさまざまな環境対応ニーズにお応えするため、国が認証したJクレジットを組み合わせたカーボンニュートラルLPGの取り扱いも開始しており、国内の地球温暖化対策推進法の報告などにも活用いただけるようになりました。また昨年10月に開設された東証のカーボンクレジット市場にも市場参加者として登録しています。
三つ目が、LPガスを利用した燃料転換です。LPガスの輸入・海上輸送にはVLGC(*2)と呼ばれる大型のガス運搬船を使用しますが、その燃料には重油が使われます。当社は2023年に、重油に加えて環境負荷の低いLPガスの両方を燃料として運航できるDual Fuel船を自社船団に導入しました。これによって、海上輸送における環境負荷を低減する取り組みを行っています。LPガスで運航すれば、重油と比べてCO2排出量を約20%削減できると見込まれており、今後も同様の取り組みを継続する計画です。
国内においても、地場の工務店や特約店様と連携し、低炭素化に貢献するLPガス住宅「ホッと楽な家」を展開しています。この「ホッと楽な家」はエネファームを装備しており、高効率で発電し廃熱も有効利用できるため、1台で年間1.0~1.5トン程度のCO2削減効果があると言われています。杉の木1本が1年間に吸収するCO2量が約14kgとみなされていますから、削減効果は杉の木70~100本分の吸収量に相当します。さらには、停電時におけるレジリエンス性も確保しています。
*2:Very Large Gas Carrier、大型ガス運搬船
篠島 4番目は、LPGの脱炭素化、いわゆるグリーンLPGですね。昨年GSLでも調べたテーマで、非常に難しそうだなと思いました。
田中 そうですね、実際難しいテーマで、長期的な視点で取組む必要があります。LPGの脱炭素化に向けては、LPガス元売り5社共同で「日本グリーンLPガス推進協議会」を通じて、CO2と水素から直接LPガスを合成製造するグリーンLPガスの技術開発を進めており、2050年の社会実装の実現を目指しています。これまで、北九州市立大学の研究室で研究開発を行ってきましたが、北九州エコタウンに新たに大型試験装置を設置してグリーンLP ガス製造の実証研究を本格化します。さらには2050年に向けて、製造規模を段階的にスケールアップする計画です。
篠島 これが実現したら、革命的なエネルギーになるだろうという期待感と、別の方法でも脱炭素に貢献できる方法を模索しておく必要もあるかと考えていました。
田中 そういう意味では、次にお話ししようと思っていたアンモニアですね。日本政府はグリーン成長戦略の一つとして水素・アンモニアの普及拡大に力を入れています。特にアンモニアはLPガスと物性が似ており、LPガスの既存インフラやビジネスモデルを活用できる可能性があります。一方でアンモニアは毒性もあり、安全性・経済性を含めて数多くの課題もあります。しかし、国や調査機関によると、石炭火力発電のアンモニア混焼や船舶用燃料として2050年時点で年間2000万トン以上もの大きな需要が立ち上がる見通しが出ており、脱炭素化という観点だけではなく、新たなビジネス機会としても前向きに検討を進めたいと考えています。
篠島 新しい取り組みもどんどん進んでいきますね。
将来を見据えた新しいチャレンジのできるジクシス
田中 長期的目線でのグリーンLPGやアンモニア、短中期目線でのLPガスへの燃料転換、カーボンクレジットの活用といったように、カーボンニュートラルの取り組み案件は多岐にわたります。もちろんLPガスビジネスの本業も非常に重要です。ビジネスとカーボンニュートラルの両面から将来を見据えて一緒に考え自ら行動できる人に当社に来ていただき、強く魅力あるジクシスを共に作り上げることができればと考えています。
篠島 ジクシスが、社歴の浅い会社ということもあり、新しい挑戦に挑みやすい柔軟さがあると感じています。若い人にとっては、LPガスを通じてカーボンニュートラルのプロセスにも携われますし、自身とジクシスの発展にチャレンジできるかと思います。ぜひ一緒に働ける仲間になってほしいです。田中さん、ありがとうございました。
田中 こちらこそ。ジクシスは、フラットで風通しの良い会社です。若手でもキャリアを積んだ方でも、のびのびと力を発揮していただけると思います。一緒にチャレンジしましょう。
こちらもご覧ください